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月給者の遅刻早退欠勤控除の計算方法

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従業員が所定の労働時間に遅刻、または欠勤した場合、従業員の月給からその分の賃金を控除することが出来ます。

計算方法を明確にし、不公平の内容に運営することが大切です。

 

 

ノーワーク・ノーペイの原則

労働基準法24条では給与計算において守るべきルールとして、「ノーワーク・ノーペイの原則」を定めています。

ノーワーク・ノーペイとは、「働かなければ、(給与を)支払わない」ことを意味し、会社は従業員が働いた分だけの給与を支払うことを意味します。

この原則は、雇用形態にかかわらず全ての従業員に対して適用されます。

 

遅刻や早退、欠勤によって、本来であれば働いているはずの時間に就労しなかった時間分の賃金の控除を「不就労控除」と呼びます。

従業員が所定の時間働かなかった場合、「不就労控除」として基本給からその分の賃金を控除することが出来ます。

 

不就労控除の給与計算方法

不就労控除額が以下の通り計算することが出来ます。

 

不就労控除額 = 給与額 ÷ 1か月当たりの平均所定労働時間 × 遅刻や早退の時間

1か月当たりの平均所定労働時間 = 365 ー 年間休日日数 ÷ 12 × 1日の所定労働時間

 

不就労控除の具体例

基本給が20万の従業員が3時間遅刻をした場合の計算方法は以下の通りです。

(年間休日120日、1日の所定労働時間8時間の会社の場合)

 

1か月当たりの平均所定労働時間 = 365 ー 120 × 163.33

200,000円 ÷ 163.33 × 3時間 = 3673.5

不就労控除額は 3,673円 となります。

 

計算結果に端数が出た場合は、必ず切捨てにしなければなりません。

切上げにした場合、働いた分の賃金も控除してしまう為、賃金の未払いとなってしまいます。

 

諸手当の控除にはあらかじめ規則が必要

就業規則に基づく場合にかぎり、手当も不就労控除することが可能です。

定額残業手当や役職手当なども控除の対象とする取決めがある場合は、基本給だけでなくそれらの手当ても、上記と同じ計算方法で控除することが出来ます。

 

 

 

まとめ

従業員が所定の時間働かなかった場合、「不就労控除」として基本給からその分の賃金を控除することが出来ます。

計算方法は以下の通りです。

不就労控除額 = 給与額 ÷ 1か月当たりの平均所定労働時間 × 遅刻や早退の時間

 また、就業規則に基づく場合にかぎり、基本給以外の手当も不就労控除することが可能です。

 

遅刻早退控除は法律で具体的に定められていない事項のため、計算方法が曖昧になりがちです。

あらかじめ就業規則でしっかりと定めておき、それに従って計算することが大切です。

 

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怪我や病気で休んだ時に貰えるお金、傷病手当金

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新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、会社を長期間休んだ場合の保障について不安に感じた人も多いのではないでしょうか。

今回は、けがや病気で働けないときに給与の保障が受けられる制度、傷病手当金につて説明します。

 

 

傷病手当金とは

傷病手当金は、病気やケガの療養のために働けないときに、要件を満たせば、健康保険から所定の手当金を受け取ることが出来る制度です。
各勤務先で加入できる社会保険の被保険者であれば申請することができ、給料が支給されない期間の生活を保障してもらえます。

 

傷病手当の支給条件

健康保険から手当金を受け取るには、以下の4つの要件をすべて満たさなくてはなりません。

  1. 業務外の療養を要する病気や怪我であること
  2. 病気やケガの療養のため仕事が出来ない状態であること
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事が出来ない状態であること
  4. 病気やケガで休んでいる間に給与の支払いがないこと
業務外の療養を要する病気や怪我であること

業務中や通勤中で生じた病気やケガのために療養していて働けなくなった場合は、傷病手当金を利用することはできません。

仕事中や通勤途中での病気やケガは、労働災害保険の給付対象となり、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

病気やケガの療養で仕事が出来ない状態であること

被保険者は、病気やケガの療養のために、今までやっていた仕事ができない状態でなければなりません。

業務に就けないかどうかの判断は、医師の証明や被保険者の仕事内容などを考慮して行われます。

また、美容整形手術など健康保険の対象とならない治療のための療養に対しては、傷病手当は支給されないので注意が必要です。

 

連続する3日間を含み4日以上仕事が出来ない状態であること

傷病手当金には、3日間の待機期間が存在します。

3日間連続して休んだ以後の4日目以降、つまり、4日以上仕事を休んでいる状態でなければ傷病手当金は支給されません。

待期期間3日間には、有給や公休、欠勤も含めることが出来ます。

 

病気やケガで休んでいる間に給与の支払いがないこと

ケガや病気の療養で仕事を休んでいる期間に給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。

給与が一部だけ支払われた場合は、傷病手当金から給与支払い分を減額した額が支給されます。

 

傷病手当が支給される期間

傷病手当金が支給される期間は、最初に傷病手当金が支給された日から最長で1年6カ月と定められています。

支給期間中に、一時的に病状が良くなり出勤した日に給与の発生しても、その期間も受給期間の1年6カ月の中に含まれます。

しかし、1年6カ月以降は病気やケガが回復しなかったとしても、傷病手当金が支給されることはありません。

 

支給される傷病手当金の額

傷病手当金は、おおよそ給与の2/3の金額が支給されるようになっています。

具体的には、支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額の平均を30日間で割った金額の2/3が、1日当たりに支払われる傷病手当金の額となります。

 

傷病手当金が支給される対象

傷病手当金は、社会保険制度に加入している被保険者本人のみです。

勤務形態に制限はなく、正社員にかかわらず派遣やパートでも勤務している人も健康保険に加入さえしていれば傷病手当金の支給を受けることが出来ます。

国民健康保険後期高齢者医療制度、または被保険者の浮揚に入っている人は傷病手当金の対象外です。

 

年金や出産手当金との併用について

傷病手当金と同時に厚生年金保険の障害厚生年金や障害手当金、老齢年金などを受けている場合に傷病手当金の支給額が調整されて支給されます。

年金制度と併用している場合は、傷病手当金の支給を停止する、もしくは削減することで合計の支給額が調整されます。

また、出産手当金を受給している場合は傷病手当金は同時に受け取れませんることはできません。

しかし傷病手当金の金額が高い場合、差額を受け取ることが出来ます。

 

支給の途中で退職時した場合の継続給付

傷病手当金を受け取っている期間中に会社を退職する場合について、仕事のできない状態が続いていて、かつ退職日までの勤続年数(健康保険に加入している期間)が1年以上あるときは、引き続き支給を受けることが出来ます。

退職によって資格の得失があっても、1日の空白もなく被保険者資格が連続していれば問題ありません。

 

条件を満たさない場合は、退職した時点で傷病手当金の支給は停止されます。

 

また、会社などを休み始めて3日目に退職した場合は、3日間の待機期間は完成しますが、支給を受けうる状態であるとは言えないため、継続給付を受けることはできません。

一方で退職日まで有給休暇を利用して報酬の全額が支給されていて、傷病手当金が支給されていない場合は、支給を受けうる状態であると判断され、継続給付を受けられます。

※退職後の労務不能とは、退職前の当時の労務に服することができないのと同程度のものと判断されます。

 

申請時の注意点

公休の取り扱い

傷病手当金では、土日曜日や祝日など会社の公休日も支給対象となります。

休業期間を記入する際に、最終日が日曜日で翌週の月曜日から仕事に復帰する場合でも、休業期間の終了日は日曜日となります。

 

申請の毎に担当医師の証明が必要

申請期間をどこで分割するかはは特別決められていない為、毎月申請しても、数か月分まとめて申請しても問題ありません。

しかし、長期間の休業で傷病手当金を分割して申請する際は、そのたびに担当医師の証明が必要です。

※加入する医療保険によって規定が設けられている場合もあります。

 

申請後給付までの期間

申請してから実際にお金が振り込まれるまでの期間は、全国健康保険協会の場合、2週間後が目安となります。

特に初回は、書類の審査に時間がかかるので支給まで日数を要します。 

 

 

 

まとめ

傷病手当金は、病気やケガの療養のために働けないときに、以下の要件をすべて満たす場合に申請することが出来、健康保険から所定の手当金を受け取ることが出来る制度です。

  1. 業務外の療養を要する病気や怪我であること
  2. 病気やケガの療養のため仕事が出来ない状態であること
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事が出来ない状態であること
  4. 病気やケガで休んでいる間に給与の支払いがないこと

アルバイトやパートでも有給休暇はとれるのか

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有給休暇は、正社員だけが取得することが出来ると思っている人も多いですが、実はアルバイトやパートタイムで働く人も取得できます。

付与日数は人によって違うので、有給休暇の決まりについて詳しく見ていきましょう。

 

 

アルバイトでも年次有給休暇は付与される

有給、有休、年休などとも呼ばれますが、有給休暇の正式名称は「年次有給休暇」です。

有給休暇は名前の通り、休んでも給料が発生する日のことを意味し、会社を休んでも通常出勤したのと同じように扱われ、給与が支払われます。

もちろん、月給の人だけでなく時給や日給の人ももちろん取得できます。

有給休暇は正社員だけの制度かと思われがちですが、実はアルバイトやパートでも、一定の要件を満たせば、毎年定められた日数が付与され、その範囲の中で自由に使用することが出来ます。

これは労働基準法第39条定められているため、会社は要件に該当する労働者に有給休暇を取得させる義務があり、拒んだ場合は法律違反となります。

 

アルバイトでも有給休暇をもらえる条件

有給休暇が付与される条件は、以下の通りです。

  1. 同じ会社に半年以上継続して勤務していること
  2. 所定労働日の8割以上出勤していること
  3. 既定の労働時間、労働日数以上働いていること

 

2の、所定労働日とは、入社時に会社とどのような契約を結んだかによって異なります。

半年の間で120日出勤するような契約を会社と結んでいた場合、出勤した日数が96日(8割)以上あれば条件を満たしていると言えます。 

このとき、有給消化日、遅刻早退した日、産休・育休中なども1日出勤したとみなされますので要注意です。 

 

また、3の『既定の労働時間』とは、以下の通りです。

  • 労働時間:週30時間以上または、労働日数:週5日 or 年間217日以上⇒ 年10日間付与
  • 労働時間:週30時間未満かつ、 労働日数:週4日以下 or 年間48日~216日 ⇒ 労働時間や労働日数によって付与

 

週30時間以上、または週5日以上労働している場合はアルバイトであっても、フルタイムで働く従業員と同じ日数が付与されます。

 

有給休暇の取得日数の計算方法

有給休暇を取得できる日数は、有給が付与される時点での契約で決められている、所定勤務日数によります。

以下で詳しく説明します。

週30時間以上または、週5日 or 年間217日以上の場合

継続勤務期間による有給の付与日数は以下の通りです。

0.5年:10日

1.5年:11日

2.5年:12日

3.5年:14日

4.5年:16日

5.5年:18日

6.5年以上:20日

勤務開始から半年後に10日付与され、それから1年ごとに上記の通り決められた日数の有給休暇が付与されます。

勤務6年半以降は、毎年20日付与されるようになります。

 

労働時間:週30時間未満かつ、 労働日数:週4日以下の場合

継続勤務期間による有給の付与日数は以下の通りです。

 

・週1日勤務(年48〜72日)の場合

0.5年:1日

1.5年:2日

2.5年:2日

3.5年:2日

4.5年:3日

5.5年:3日

6.5年以上:3日

 

・週2日勤務(年73〜120日)の場合

0.5年:3日

1.5年:4日

2.5年:4日

3.5年:5日

4.5年:6日

5.5年:6日

6.5年以上:7日

 

・週3日勤務(年121〜168日)の場合

0.5年:5日

1.5年:6日

2.5年:6日

3.5年:8日

4.5年:9日

5.5年:10日

6.5年以上:11日

 

・週4日勤務(年169〜216日)の場合

0.5年:7日

1.5年:8日

2.5年:9日

3.5年:10日

4.5年:12日

5.5年:13日

6.5年以上:15日

 

週1日など月に数回しか出勤しないような人でも条件を満たすと、有給休暇が比例的に付与されます。

 

有給休暇は使わないと2年で消失する

有給休暇は、付与されたら日から2年をすぎると消滅します。

入社半年後に付与された有給は入社2年半後には消えてしまいますので、計画的に取得することが大切です。

 

注意点

アルバイトやパートタイムとして働いている場合、契約で決められた所定勤務日数と実際の勤務日数が大きく異なる場合があります。

その場合は、過去の勤務の平均日数から有給休暇が付与されることもありますので、会社に確認をとってみましょう。

 

 

 まとめ 

アルバイトやパートタイマーでも、出勤日数に比例した数だけ有給休暇が付与されます。

有給休暇中は会社を休んでも通常出勤したのと同じように扱われ、給与が支払われます。

正社員と同じように使用でき、会社は有給休暇の取得を拒むことはできません。

 

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年齢に応じた社会保険の変更について

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給与から各種の社会保険料において、従業員等が特定の年齢をむかえたタイミングで変更しなければならない点があります。

給与計算時に注意が必要ですので、しっかり理解しておきましょう。

 

 

40歳:介護保険料の控除開始

社会保険の被保険者は、40歳に達する日より、「介護保険第2号被保険者」となり、介護保険料の徴収が開始されます。

具体的には、40歳に到達する日(誕生日の前日)を含む月から保険料が発生します。

 

60歳:「60歳到達時賃金証明書」の申請

多くの会社で60歳は定年の年齢と定められていることが多いですが、60歳を超えて雇用される従業員がいる場合には管轄のハローワークに「60歳到達時賃金証明書」の申請がをします。

 

雇用保険の被保険者で、60歳以降に支給される給与月額が、60歳到達時点給与月額のの75%未満となる人は、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」の支給を受けることが出来ます。

そのためには、60歳到達時点の給与額を証明しておく必要があるため、60歳に到達した時点で「60歳到達時賃金証明書」の届出を出しておき、実際に75%未満となったときに、給付金の申請をします。

 

現段階で給与が75%未満となる予定が無い場合でも、本人の転職などによって後から求められるケースもあるため、出来るだけ出しておいた方が無難です。

  

65歳:介護保険料の控除終了

社会保険の被保険者は、65歳の到達日より、「介護保険第1号被保険者」となります。

その為、以降の給与から介護保険料を控除せず、本人が直接市区町村に納付するようになります。

特別な届出は必要ありませんが、給与支給時の変更を忘れないように注意が必要です。

具体的には、65歳に到達する日(誕生日の前日)を含む月分から保険料の徴収方法が切り替わります。

 

70歳:厚生年金保険被保険者の資格喪失

社会保険の被保険者は、70歳に到達した時点で厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。

その為、以降の給与からは厚生年金保険料を控除しません。

 

また、70歳に到達した従業員を雇用している会社は、年金事務所に「厚生年金保険被保険者資格喪失届」と「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を同時に提出する必要があります。

 

75歳:健康保険被保険者の資格喪失

社会保険の被保険者は、75歳の誕生日より後期高齢者医療の被保険者となり、健康保険の被保険者資格を喪失します。

その為、それ以降の給与からは健康保険料を控除しません。

 

75歳に達する従業員を雇用する会社には、年金事務所から「健康保険被保険者資格喪失届」が送付されます。

それに被保険者と被扶養者の健康保険証、高齢受給者証を添付して提出する必要があります。

 

注意点 

社会保険制度における「年齢到達日」や、「〇歳に達する日」とは、原則として誕生日の前日のことを指します。

例えば、40歳に到達すると発生する介護保険料は、1月1日が誕生日の人の場合、1月分からではなく、誕生日の前日である12/31が含まれる月、つまり12月分から保険料が発生します。

 

しかり、75歳のときのみ他の年齢と違い、「年齢到達日」ではなく「誕生日当日」が健康保険の喪失日となります。

 

まとめ

従業員が40歳、60歳、65歳、70歳、75歳に到達する際に、社会保険の控除額の変更や、各手続きが発生します。

特に「1日生まれ」の従業員の資格取得(喪失)日は間違えやすいので注意が必要です。

 

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通勤手当の課税か非課税か

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多くの会社で従業員に対し、自宅から会社までの通勤費用を「通勤手当」として給与で支給しているのではないでしょうか。

 

通勤手当には条件によって課税になる場合も非課税になる場合もあります。通勤手当の課税について正しく理解して運用することが大切です。

 

 

原則非課税だが一定額以上は課税対象

通勤手当は原則非課税ですが、一定額を超えた分は課税対象になります。

通勤手当は、残業手当や家族手当などと比べて、会社に通勤するための費用弁償の意味合いが強いため課税対象としては見られません。


しかし、通勤手当は一定額を超えると課税対象となるため、間違えて理解してしまうと所得税の算出額を誤ってしまったり、過少申告をしてしまったりする危険性があります。


通勤手当が課税となる基準

通勤手当の課税については、通勤方法や通勤距離によって定められていて、それぞれの通勤パターンごとに違うため注意が必要です。

公共交通機関での通勤の場合

電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は、非課税額は国税庁のホームページに記載されています。
具体的には、最も経済的かつ合理的な経路及び方法による通勤手当や通勤定期券などの金額が、1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります。


また、新幹線の利用は遠隔地からの出勤などに有効であり、15万円の範囲内で非課税として認められています。

しかし、グリーン車の利用は、経済的かつ合理的とは認められず課税対象となります。

 

イカー、自転車での通勤の場合

イカーや自転車、バイクなどを利用している場合、各通勤距離に応じて非課税限度額が定められています。

国税庁によって公表されている1ヵ月当たりの非課税限度額では、以下の通りに定められています。


片道の通勤距離: 1ヵ月当たりの非課税限度額

 2㎞未満:全額課税

 2㎞以上10㎞未満:4,200円まで

 10㎞以上15㎞未満:7,100円まで

 15㎞以上25㎞未満:12,900円まで

 25㎞以上35㎞未満:18,700円まで

 35㎞以上45㎞未満:24,400円まで

 45㎞以上55㎞未満:28,000円まで

 55㎞以上:31,600円まで


交通機関とマイカーや自転車等を併用する場合

公共交通機関とマイカーや自転車等を組み合わせて通勤している場合は、交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額とマイカーや自転車などを使って通勤する片道の距離で決まっている1か月当たりの非課税となる限度額の合計額のうち15万円が限度です。

 

1日毎に通勤手当が支給される場合

パートタイマーや日雇い労働者は、1日当たりの通勤手当を支給している場合や、通勤回数によってその月の通勤手当が変わる場合があります。

その場合は、通勤手当を1ヵ月単位に算出して非課税限度額が決まります。

 

具体例

公共交通機関を利用して通勤しているある従業員に1ヵ月当たり17万円の定期代を支給している場合、15万円分は非課税、2万円分は課税対象です。
3ヵ月、6ヵ月定期券など、数か月分の通勤手当をまとめて支給している場合は、定期代の総額を月数で割って、1ヵ月分に換算して考えます。

 

通勤距離片道12㎞のマイカー通勤をしているある従業員に、10,000円の通勤手当を支給している場合、非課税限度額の7,100円を超過した2,900円分が課税対象となります。

 

1ヵ月当たりの定期代14万円、自動車での通勤手当として2万円を支給している場合、15万円を超過した1万円分が課税対象です。

 

通勤距離片道12㎞のマイカー通勤をしているある従業員に、1日当たり1,000円の通勤手当を支給している場合で、月に10日出勤したときは、通勤手当は月額10,000円になり、片道12㎞の非課税限度額7,100円を超過した1,900円分が課税対象になります。


注意点

タクシー利用については、利用した状況によって課税か非課税かの判断が変わります。

定時に退勤したにもかかわらず、めんどくさがってタクシーを利用した場合は「経済的かつ合理的である」とは認められません。
しかし、残業などで利用できる電車やバスがない時間に帰宅する際などのタクシーの利用は課税対象となります。

 

また、徒歩通勤にもかかわらず通勤手当が支給されている場合も考えられます。

その場合、通勤手当という名前で支給されていたとしても、交通費の費用弁償の性質がないため、この手当は課税対象となります。

 

まとめ

通勤手当は、原則非課税だが一定額以上は課税対象となり、判断基準はその通勤方法によって異なります。

通勤手当の課税非課税が混同されがちな理由は、所得税においては原則非課税であるが、いかなる場合も社会保険料算出の報酬月額には含まれるという点にあります。

通勤手当が非課税となるのは、健康保険や厚生年金の保険料とは全く別物ですので注意が必要です。

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残業の定義と残業手当の計算方法

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残業時間とはどの時間の労働のことを言うのか、割増賃金はどの時間に対して支払う必要があるのか、など、以下では残業に関する基本的な解説をしています。

 

 

そもそも「残業」とは?

残業とは、「時間外労働」と呼ばれ、その名の通り、会社で定められている「所定労働時間」を超えた労働時間のことを指します。

 

所定労働時間とは

所定労働時間は、就業規則雇用契約で決められている労働時間です。

これは会社によって、または同じ会社でも従業員によって違う場合があります。

毎日同じ定時で働く場合でも、シフト制で働く場合でも、この所定労働時間は必ず決められています。

 

法定労働時間とは

また、所定労働時間の上限は1日8時間、1週間で合計40時間までと法律で定められています。(変形労働時間制やフレックスタイム制を導入している事業所を除く)

この1日8時間、1週間40時間の労働時間のことを「法定労働時間」といいます。

法定労働時間は法律で定められた労働時間の上限の為、就業規則雇用契約書にこれを超える労働時間が定められている場合は、超えた分は無効となります。

 

この「法定労働時間」を超えた部分の労働時間について、雇用主は割増された賃金を支払う必要があります。

 

残業手当の計算方法

 

 

残業代は法令上「割増賃金額」と呼ばれ、うえで説明した法定労働時間を超える労働時間に対して、1時間あたりの基礎賃金を1.25倍した割増賃金が残業手当として支払われます。

 

基礎賃金とは

残業手当を計算の基礎となる賃金を(基礎賃金)は、必ずしも基本給のことを指すわけではありません。

労働基準法で定められている、基礎賃金に算入しない手当は以下の通りです。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金(インセンティブ、お祝い金など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

上記以外で支給される手当は、基本的に残業手当を算出するための基礎賃金に含めます。

 

また、上記の判断は手当の名前でなく、手当の意味を客観的に判断して決定します。

例えば、住宅手当について、従業員に一律で一定額を支給している場合は、残業手当の基礎賃金外と認められないことがあります。

残業手当の基礎賃金外とするためには、住宅手当は家賃やローンの大きさによって、従業員それぞれに合った額を支給しなければなりません。

 

月給制の1時間あたりの基礎賃金の算出方法

月給制の従業員の1時間あたりの基礎賃金は、1年間の平均の所定労働時間を用いて計算します。

例えば1日の労働時間が8時間、年間休日が120日の会社の場合、

年間所定労働時間 = 8時間 × (365日 - 120日) ÷ 12か月 で163時間(端数を切捨ての場合)となります。

1か月あたりの残業手当の基礎賃金が25万円の場合、

1時間あたりの基礎賃金 = 250,000 ÷ 163 で1,534円(端数を切上げの場合)となります。

 

残業代の割増率

1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える時間労働した場合は、基礎賃金の0.25倍の残業手当が支給されます。

さらに、午後10時から午前5時までの深夜早朝時間に労働した場合は深夜労働手当として基礎賃金の0.25倍が支払われます。

残業時間が深夜早朝時間に重なった場合、つまり、午後10時から午前5時までの間に法定労働時間を超える残業を行った場合は、 1 + 0.25 + 0.25倍 の1.5倍の賃金が支払われることになります。

 

具体例

1日の所定労働時間が7時間の会社で、午前9:00~午後20:00(休憩1時間)の10時間労働した場合(月所定労働時間163H)

 

時給1,000円の従業員の場合 ⇒

法定労働時間内(割増なし):1,000円 × 8時間 = 8,000円

法定労働時間外(割増あり):1,000円 × 1.25 × 2時間 = 2,500円

=  10,500円(2,500円が残業手当)

 

基本給200,000円、皆勤手当4,000円、通勤手当7,000円の従業員の場合⇒

法定労働時間内(割増なし):200,000円 + 4000円 ÷ 163 × 1時間 = 1,252円

法定労働時間外(割増あり):200,000円 + 4000円 ÷ 163 × 1.25 × 2時間 = 3,129円

= 4,381円(毎月の月給に残業手当として+で支給される)

 

1日の所定労働時間が8時間の会社で、午前9:00~午後23:00(休憩1時間)の13時間労働した場合(月所定労働時間163H)

 

時給1,000円の従業員の場合 ⇒

法定労働時間内(割増なし):1,000円 × 8時間 = 8,000円

法定労働時間外(割増あり):1,000円 × 1.25 × 4時間 = 5,000円

深夜労働時間(割増あり):1,000円 × 0.25 × 1時間 = 250円

=  13,250(5,250円が残業手当)

 

1日の所定労働時間が8時間の会社で、午前9:00~午後18:00(休憩1時間)の8時間労働を週6日、つまり、週48時間の労働を行った場合。(月所定労働時間163H) 

 

基本給200,000円の従業員の場合⇒

週40時間を超える法定労働時間外(割増あり):200,000円 ÷ 163 × 1.25 × 8時間 = 12,270円

= 12,270円(毎月の月給に残業手当として+で支給される)

 

 

注意

大企業では、法定休日以外の実際の労働時間が法定労働時間を超えた時間が1ヶ月あたり60時間以上の場合、60時間を超えた部分の残業については、1.25倍の割増率が1.5倍になります。

この法律は、2023年4月以降は中小企業へも適用されます。

 

 

 

まとめ

法定労働時間を超える残業や、深夜早朝時間の労働には1時間当たりの基礎賃金の+0.25倍の割増賃金が支払われます。

深夜早朝時間に法定労働時間を超えて労働した場合、1時間当たりの基礎賃金の+0.5倍の割増賃金が支払われます。

1時間当たりの基礎賃金の算定には、基本給だけでなく、労働の対価として支払われる性質のある手当も含まれます。

 

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産前産後休業、育児休業を取得できる条件とは

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産前産後休業、育児休業とは妊娠、出産、育児のために会社を休むことが出来る制度です。

多くの人にとって、人生設計をする上で理解しておきたいポイントをまとめました。 

 

 

産前産後休業とは

産前産後休業は出産予定日の6週(双子以上の場合は14週間)前から、出産後8週の間取得することが出来ると労働基準法で定められています。

従業員から産休の申し出があった場合は、正社員、契約社員、アルバイトなどの雇用形態に関わらず必ず許可しなければなりません。
従業員が休業の請求をしたにもかかわらず、就業させると法律違反となり、処罰の対象となります。

産後6週間を経過した場合は、従業員が希望する場合に限り、医師が支障がないと認めた業務に就かせることが可能です。
産後6週間の間は、たとえ従業員が希望していたとしても、必ず休ませなければいけない為注意が必要です。

 

育児休暇とは

育児休業を取れるのは、原則として1歳に満たない子を養育する従業員で、性別は関係なくお母さんもお父さんも取得することが出来ます。(女性の場合は産休明けから、男性の場合は出産後すぐから取得可能)
また、共働きの家庭に限らず、パートナーガ就業していない場合でも取得できます。

育児休業は原則子供が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間取得することが出来ますが、特別の事情がある場合(入園できる保育園がないなど)は、子供がが最長2歳に達する日まで育児休業を取得することができます。

パートタイムで働く人や派遣労働者も対象となります。

 

育児休業を取得できない人

育児休業は、勤務先の就業規則に規定がない場合でも、事業主に申し出ることにより、雇用関係を継続したままで休業することができます。

 

ただし、以下の条件に当てはまる人は育児休業を取得できません。

  • 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の場合
  • 子が1歳6か月に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかな場合(延長する場合は「子が2歳に達する日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと」となります)

 

一つ目について、育児休業を取得するには同じ会社に1年以上継続して勤めていることが条件になります。
派遣社員の場合は、派遣先ではなく派遣元での雇用期間が1年あればOKです。

例えば、3か月ごとに派遣先をが変わっていても、同じ派遣元の会社に雇用されている期間が1年以上であれば条件をクリアしているといえます。

 

二つ目については、子供が1歳6か月到達日までに労働契約が満了しないということです。
労働契約が満了するとしても、更新の可能性があるなら育児休業は取れます。

労働契約を更新しない旨が明示されているなどしていて、1歳6か月に達する日までの間に期間満了となることが明確な時は育児休業の取得が出来ません。


入社1年未満の人が取れる対策

まず一つ目は、産前産後休業期間や短期間復職するなどして1年経過するのを待つ方法があります。

1年未満は、入社から育児休業申出をする時点までの期間とされています。

その為、入社1年未満で妊娠したとしても、産後休業後を経て一度復職し、入社1年たってから育児休業の申出をして育児休業に入ることができます。


また、入社1年未満の従業員の育児休業除外には労使協定が必要です。

そうと知らず、労使協定を結んでいない会社が多くあるのも事実です。

育児休業の申出をして拒否された場合は、労使協定を開示するよう求めてみましょう。

労使協定がない場合は入社1年経過していない場合でも育児休業の取得が可能です。

 

まとめ

産前産後休業は、雇用形態に関わらず、出産予定日の6週前から、出産後8週の間取得することが出来ます。

育児休業は、原則として1歳に満たない子を養育する従業員で、お母さんもお父さんも取得することが出来ます。

育児休業は入社1年未満の従業員は取得できませんが、一時的な職場復帰や労使協定の確認によって取得できる場合もあります。

 

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